職業野球を追いかけて

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野村克也流・野球観戦術 『野村ノート』で読み解く打者分析

先日亡くなられた野村克也さんの著書『野村ノート』を読んだという記事を書いた。

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本のなかでは他にも、タイプ別打者分析についての話もしている。今回は簡単ではあるが、野村流打者分析について、著書を引用しながら語りたい。

打者のタイプは4つある

野村さんは打者を4つのタイプに分けている。

A型=直球に重点を置きながら、変化球にも対応しようとする。

B型=内角か外角、打つコースを決める。

C型=右翼方向か左翼方向か、打つ方向を決める。

D型=球種にヤマを張る(このタイプは根拠を見つける努力をするとよい)。

日本人打者の多くがA型で、D型でもツーストライクに追い込まれるとA型へと変わる選手が多いとのこと。これは、変化球にヤマを張ってストレートが来た場合に見逃し三振してしまう怖さがあるためだという。

 

一方で外国人打者はこうした三振への恐れがないためか、追い込まれるまでA型で、追い込まれるとフォークやチェンジアップなど、相手投手がもっとも得意とする球種にヤマを張るタイプが多いそうだ。

 

ちなみに“天才”イチローは、変化球をマークしながらストレートにも着いていくタイプ。普通の打者であれば、ストレートよりも遅い変化球に合わせていると、速い球が来た場合にまったく対応できない。これがイチローが持つ“天才”要素の1つと言える。

 

B型は強打者が一時的に取ることが多く、内角球を打ってホームランにしたあとの打席で「もう内角には投げてこないだろう」とヤマを張ったりするという。また、ランナーを進めたい場面で、右に打つため、右打者なら外角寄り、左打者なら内角寄りと、打つコースを決めることもある。

 

C型は相手投手を騙すときに取るタイプ。引っ張ると見せかけて外角球を投げられると、実際には流し打ち、安打をもぎ取るという作戦で使われる。野村さんは元木大介を代表例として挙げており、桧山進次郎、古田敦也も場面によってこのタイプになるそうだ。

 

A型の選手はいつも打席でA型、D型の選手はいつもD型といったようにいつもタイプが同じわけではなく、場面に応じてB型、C型とタイプを変えていく。好打者は普段はA型でも、状況に応じてB型、C型、D型と使い分けることが多いのだという。

ファンはどう観るべきか?

さて、これを踏まえると観戦中にファンが観るポイントがあることに気がつく。

例えば、初球、ど真ん中に甘い変化球が投げられたにも関わらず見送った、というケースでは、今はA型だったのかな? と観ることも出来る。ストレートを狙っていたが変化球が来た、ということだろう。もちろん、「初球はとりあえず見送って様子見」というパターンもあり得るし、D型で特定の変化球にヤマを張っていたケースも考えられるが、とりあえずは、A型でストレートに張っているのかもしれない、と考えながら観ることで、次の球以降、打者がどう反応するかを楽しむことが出来る。

 

また、初球から際どいコースに投じられたフォークにバットが出かかったり、体がぴくりと反応した場合は、「この打席はD型で、フォークにヤマを張っていたか?」と見ることも出来る。

 

こうした「打者の狙い」を判別するだけでも、野球観戦がもっと面白くなるだろう。

内角にどう反応するか?

打者の反応を伺うという観察は、野村さんも行なっていた。

私は、その打席の最初に投げる内角球は決してストライクゾーンに投げるなとうるさくいっている。ボール球でいい、打者の反応を見て、狙ってくるのかこないのかを見極め、狙ってきてないと読んだら、次は内角のストライクで勝負をする。シュートがあればなお効果的だ。

ファンも同じく、内角に投げられたとき、打者がどう反応するかを見てもいいだろう。

 

また、内角球に関して野村さんが持つこだわりは強い。内角球を投げる目的を一覧にして書いているほどだ。

1 内角球を見せて意識付けをさせ、打者の壁を崩したい。

2 内角に投じることで、対となる球種(緩急、内外)を活かしたい。

3 内角球をフェアエリアに打ちこなす技術は難しい(ファウルを打たせる)。

4 打者が内角に弱点をもっている場合。

5 内角球でゴロを打たせ、併殺を狙う。

6 右打者が右方向を狙っていると読んだとき。

7 配球によって内角に死角ができたと読んだとき。

 1に関しては、打者が持つ習性が大きく影響している。打者は変化球を大きく空振りする恥ずかしさと同様に、バットの根元で打つことに羞恥心を抱いているのだという。そのため、1打席目で相手打者に根元で打たせると、その後の打席が大きく楽になる。

 

さらに、投手が球を投げたとき、右打者なら左肩、左打者なら右肩が開けば、それは内角を意識している証拠であるとも語っているそして内角を意識して体を開いてしまうと、バッティングにおいて重要な「壁」を崩し、打つことが難しくなるそうだ。

 

そのため、野村さんは常々捕手に、

「打者が見逃したときに、ただ投手に返球するな。捕球してから返球する動作のなかで、必ず打者の肩の変化を見ろ」

と話していたという。

 

こうした野村さんが語る野球の見方を覚えておくと、より観戦の味わいが深まるはずだ。